上野塾頭の教育論 3

上野

人の能力の伸び方というのは、ある一定の法則があります。これは腕力だとか走力だとか思考力だとか、暗記力とかも一緒です。それは何かと言いますと、「少しずつ、徐々に伸びていくことはない」ということです。毎日少しずつ伸びていくということは一切ないのです。別の言い方をすれば、「努力と成果は比例しない」ということです。

例えば、今日、バットの素振りを百回すれば、明日その分バッティングが上手になっているでしょうか? 今日、100mダッシュを10本走れば、明日100mの記録が0.01秒でも伸びるでしょうか? 残念ですが伸びません。毎日0.01秒ずつ伸ばしていくなどというのは、カール・ルイスにも不可能です。そんな伸び方はしないのです。

では、能力はどのように伸びるのでしょうか。実は、頑張っても、頑張っても伸びない、上手にならない状態が続く中、ある瞬間にグーンと伸びるのです。一気に伸びるのです。その瞬間をブレイクポイントと言います。身長もそうでしょう。1年間に1cmぐらいしか伸びない時期があったかと思うと、成長期に突然、1年間に20㎝伸びることも珍しくありません。毎日毎日、素振りを100回ずつ続けていても一向にバッティングが上手くならないと思っていたある日、そう、中学2年生の秋、練習試合で突然打てるようになる。人間の能力というのはそのように伸びるのです。そして、この突然伸びる時期を迎えるために、こつこつと続ける「努力」と呼ばれるものが必要になるわけです。

何もしないのに突然伸びることはありません。身長だってそうですね。食べ物を食べなければ伸びるはずがありません。毎日食事をしているので、ある日突然伸びるのです。野球だって、陸上だって、バスケットだって、歌だって、腕立て伏せを毎日やっている腕力だって、全部一緒です。この期間にも法則があって、個人差はありますし、分野によって差はありますが、「早くて3ヵ月、遅いと3年」と言われています。その間に一気に伸びる時期を迎えるわけです。学力も同じです。毎日のたゆまぬ学習の先に学力の成長期を迎えるのです。

これは一夜漬けで点数が取れたというのとは全く別のことです。徹夜して一生懸命「社会」の重要事項を暗記すれば、次の日のテストでいい点が取れることもあります。しかし、それは学力という力が伸びたのではなく、暗記力が伸びたわけでもなく、ただ単に記憶が残っていたというだけのことです。ですから、そうやって覚えたものはテストが終わるとすぐに忘れてしまい、身に付きません。自分の本当の能力としては蓄積されないのです。本当の学力とか本当の暗記力とか思考力というものは、訓練を始めて3ヵ月から3年の間に伸び始めるのです。

私たちは、その学力の成長期が早く子供たちに訪れることを願っています。そのために、時には辛く苦しい訓練を強いることもあるのです。


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